M&B スクール

歯周病学科

糖尿病患者の歯周治療

糖尿病患者の歯周治療は、まず糖尿病を含めた全身状態の把握のため内科主治医と連携を持つこと、徹底した口腔内の衛生状態の改善を行うこと、必要に応じて抗菌剤を使用すること、術後感染予防が特に重要であることなどがあげられる。

【表1】糖尿病患者の歯周治療において知っておくようにしていること 1型糖尿病か2型糖尿病かを知る 1型糖尿病患者は血糖値が不安定になりやすいので十分注意する 血糖コントロールが良好であるかを知る 血糖値、HbA1c値を担当医に対診、現状を知り術前、術後の抗菌剤の投与の必要性を知る随時血糖値が150〜200mg/dlにはコントロールされていることを知る 合併症の有無を知る 心筋梗塞、脳梗塞などのリスクの高い合併症にはとくに注意するワーファリン使用の際はPT-INR値が3.0以下であることを確認 糖尿病罹病期間を知る 合併症のリスクや治療に対する反応性を予測する処置後の後出血、治療遅延の可能性を予測する 喫煙者であるかを知る 糖尿病と合わさると、治療の良否に大きく影響するため、できれば禁煙させたい P.gingivalis 感染の有無を知る 風邪を引いていないかを知る

参考として、日本歯科医師会雑誌「糖尿病と歯周病−歯科医師が知っておくこと−」から「糖尿病患者の歯周治療において知っておくようにしていること」を右に示す。(右図表1)

1型糖尿病患者では急速な低血糖のおこるリスクがあるので、処置内容によっては対応可能な歯科での治療が必要となる。また血糖コントロールの状態、合併症に関してなど内科主治医からの情報のほか、当日の患者の体調やストレスも血糖値の変動に関係するため、特に観血処置を行う場合は必ず患者の状態の把握を怠ることのないようにしたい。血糖コントロールの指標としてHbA1cでは7%以上が不良とされているが歯周治療の可能な目安としては7.5%未満としている例もある。しかし歯周治療時だけでなく、術後感染に対する予防も重要である。抗菌剤の処方に関しては一般にセフェム系が用いられるが、現在服用中の薬剤との併用による副作用の無いよう主治医から情報を得ることが重要である。また歯周ポケット内に使用する抗菌剤には近年ミノサイクリンの利用が有効とされ、使用されるケースも多い。また歯周病細菌の検査は歯周病の発症と経過に関連するため、検査可能であるならば、特に重要なP.gingivalisは行っておきたい検査項目のひとつである。

ほかに糖尿病患者は口渇が起こりやすいなど、口腔内の細菌感染を助長させる要因も多く、歯周病だけでなくカリエスのリスクにもなりうることも考えられるので、それらに対する対処も必要であると考えられる。

また、歯周病が進行することで歯を喪失するリスクが高いことも考慮する。歯を喪失した場合、柔らかい食物を好む傾向にあるが柔らかい食物には糖質を多量に含むものも少なくない。このような点から、食事・栄養のコントロールに加えて徹底した口腔衛生管理と咬合の確保は重要であるといえる。個々の歯列も考慮した上での患者の口腔内状態に適したプラークコントロールとともに確実な歯科治療が求められる。

なお、糖尿病患者は「糖尿病健康手帳」を携帯している場合もあるため、ここからの医療情報も有益と言える。患者にとって、最適な治療を行うためには内科主治医との連携はもとより患者本人とのコミュニケーションから、より適切な治療を選択することが糖尿病患者の治療法として重要である。

前へ 1 2 次へ