過去に実施された諸家の検討から、口腔清掃の未実施により歯肉炎が惹起され、口腔衛生の再開にて歯肉炎の消失することが確認されている。こうした知見により、疾患の原因はプラーク中の細菌であり、歯肉の炎症は細菌感染による結果であることが判明した。プラークは1g中に1000億個、約300種類の細菌を含んでおり、その中の数菌種による混合感染で歯肉炎が発症する。
歯肉縁より上部にあるプラークを“歯肉縁上プラーク”、歯肉縁より下部にあるプラークを“歯肉縁下プラーク”と呼ぶが、歯肉縁下プラークになるほど嫌気度が高くなり、高為害性の菌種が多くなる。感染様式として、最初に歯肉縁上プラークがつき、歯周ポケットが形成されてから歯肉縁下プラークへと増殖が進展する。
その後、細菌性の攻撃が歯肉に及ぶと、これを受ける宿主側では生体防御機構としての体液性、および細胞性の免疫応答が賦活化し、過剰反応となることで炎症が惹起される。この際に、病変局所で産生・動員されるサイトカイン、プロスタグランジンやキニン、補体活性化因子、メタプロテアーゼなどが炎症を悪化させるのみならず、結合組織や骨の破壊にもつながってしまう。
現代日本人における歯周病の罹患率は極めて高く、軽症までを含めれば成人の大半に何らかの症状が見受けられる。歯周ポケットの深さ4mm以上に限定してさえ、15歳以上の約33%が該当するものと推定され、その割合は75歳まで加齢に伴って高くなる。75歳以降で減少するのは歯の喪失によるものである
。
こうした歯周病だが、初期には臨床症状が乏しいことから、患者の無自覚率も極めて高く、早期介入の妨げとなっており今後に課題を残している。
また、プラークに対する抵抗性が低く、易発症の経過をたどる高感受性患者がある一方で、プラークに抵抗性を発揮して発症が遅延する低感受性患者も存在し、理解を複雑にしている。ただし、大半の患者ではこれら両極端の間の状態にあり、プラーク曝露下の時間経過で多かれ少なかれ炎症病変が発現する。
【歯肉炎に対する感受性】
歯肉炎の発症速度には個体差が見受けられる。例えば、ドイツのWeldmannらが、62名の健常ボランティアを対象に継続的な口腔清掃禁止を課した試験では、25名(40%)が14日以内に実質的歯肉炎を発症する感受性群であったのに対し、8名(13%)は21日以内に発症を認めず抵抗性群であることが示された。
米国のKinane とHartらも同様に、感受性群と抵抗性群の存在を報告したが、プラークの量・質ともに群間差異を認めてはいない。従って、これらの個体差は遺伝的または環境的要因、あるいはその複合作用によるものと示唆される。
【慢性歯周炎に対する感受性】
歯肉炎とは対照的に、重篤な歯周炎は人口の一部(10~15%)に限定される。スウェーデンのLindheらによれば、2年間の経過観察で著明は進展・増悪(70%の部位にて付着喪失3mmあるいはそれ以上)を呈した患者割合は、わずか12%に過ぎなかった。おそらく、それらの患者ではリスクファクターの重積があったものと示唆される。
なお、今日までの疫学研究の結果から、宿主側リスクファクターとして、遺伝的因子、年齢、性別、喫煙、ある種の全身疾患、および社会経済的因子などが指摘されている。




