歯周病とは、歯周組織に生じる疾患の全てを含んだ総称である。

ただし、口内炎などの粘膜疾患や、歯周組織に生じる悪性腫瘍などは除外される。これらのうち、日常診療で頻繁に遭遇する主な歯周病は、「プラーク性歯肉炎」と「慢性歯周炎」の二つである。
【プラーク性歯肉炎】
「歯肉炎」は、歯肉のみに炎症性病変が生じたもので、セメント質や歯根膜、および歯槽骨には破壊が生じておらず、歯周炎の前段状態とも考えられる。また、種々ある歯肉炎のうち、主なものはプラーク性歯肉炎(歯肉辺縁に存在する細菌による炎症)とされている。
「プラーク」とは、口腔内に存在する多種の細菌とその代謝物から形成される歯垢であり、進展すると異種菌種による共凝集を生じて糖衣被覆され、バイオフィルム構造をとる。口腔内清掃を2~3日ほど中止すると、このプラークが歯面に付着・増殖して、歯肉の炎症徴候が発現する。
プラーク性歯肉炎の臨床像としては、(1)歯肉辺縁におけるプラークの存在、(2)歯肉辺縁に病変が限局、(3)歯肉色の変化、(4)歯肉の腫脹、(5)歯肉溝温度の変化、(6)歯肉溝浸出液量の変化、(7)刺激により容易に出血、(8)アタッチメント(歯に付着する歯周組織)の喪失なし、(9)歯槽骨吸収なし、(10)組織学的な変化あり、(11)プラーク除去にて炎症改善・・・などの特徴が挙げられる。
なお、プラークによって引き起こされた歯肉炎が、妊娠や特定の薬剤服用を契機に増悪する場合が知られている。それらはプラーク性歯肉炎から区別して、妊娠性歯肉炎またはフェニトイン(抗てんかん薬)性歯肉炎などと呼ばれている。
【慢性歯周炎】
「歯周炎」とは、歯肉に初発した炎症がセメント質、歯根膜および歯槽骨などの深部歯周組織にまで波及したものをいう。
歯肉炎から歯周炎への進展は比較的緩徐であり、炎症の主たる原因であるプラークが長期に維持・蓄積した結果、歯周炎として様々な症状が発現する。従って、この進展過程には患者の生活態度が大きく影響しており、慢性に推移することも珍しくない。そのため、歯周炎の代表的病態といえば、慢性歯周炎が該当する。
その臨床像としては、歯周炎の際の歯肉の所見に加えて(1)各年代で発症するが、成人において好発、(2)罹患率と重症度は年齢と共に増加、(3)歯肉縁下歯石を高頻度に認め、(4)進行性にアタッチメント(歯に付着する歯周組織)を喪失し、歯周ポケットを形成する、(5)歯槽骨の喪失も生じ、(6)急速に進行する時期もある・・・などの特徴が挙げられる。中でも、歯周炎は骨吸収を伴い、炎症が消失しても罹患前の健康な状態に回復しないことが一番の特徴である。これはプラーク性歯肉炎が骨吸収を伴わず、症状が改善すれば罹患前の状態に復すことと大きく相違する。
また、広がりと重症度による診断分類が可能であり、罹患部位が全体の30%以下であれば局所型、30%を超えるケースでは広汎型と称される。
重症度は、臨床的アタッチメントレベル(CAL)や、歯周ポケットの深さを尺度として判断される。CALによる分類では、軽度(1~2mmのCAL)、中等度(3~4mmのCAL)、および重度(5mm以上のCAL)に分けられる。
なお、慢性歯周炎の発症と進展・増悪は、全身疾患(糖尿病やHIV感染など)および全身疾患以外の因子(喫煙や精神的ストレスなど)と関係することが、近年の研究から明らかとなりつつある。






